一時間〇〇円の料金設定では依頼人と認識の乖離ができてしまう
令和4年現在の探偵料金の中で、素行調査の料金は概ね一時間あたり〇〇円という時間制料金が採用されています。また、〇〇時間で〇〇万円というパック制料金を設定している探偵事務所もあります。
この他では基本料金というものが設定されていて、あとは経費分が上乗せされているのが通常です。
ご存知ない方がほぼ100パーセントなのでご説明いたしますが、現代の探偵事務所の多くが素行調査、つまり張り込みや尾行を行う調査は下請けの調査員が担っています。
信じられないくらい仕事に波のある探偵という職業では、専属の調査員を社員として雇い入れるのは経営的に難しい判断をしなければなりません。ですからネット上で多く見受けられるような広告を出している探偵事務所はほぼ下請けの調査員が浮気調査などを担当しています。
広告では一見、在籍している探偵が多くいるように誤解しがちですが、依頼相談の電話を受ける人物と、下請け調査員との連絡をする従業員だけで何とかなってしまうものなのです。
ネット広告では”自社の社員が調査を担当”と謳っている探偵がありますが、実際にその探偵の下請けをしている人物を何名か知っているので内情が分かります。ですが、決して下請け調査員を使っている探偵がダメなのか?というとそうではありません。
下請け調査員を使う弊害
下請け調査員を時給制で探偵として雇う場合にいくつかの弊害があると私は前々から感じております。
通常のアルバイト感覚で時給制の探偵を使うことは”探偵事務所の経営”という概念からすればなんらおかしいことはありません。無駄な人件費を広告に充てることが出来るという事、仕事のない時に暇をしている社員に給料やボーナスを払う必要もありませんし、人事に頭を悩ますことも減ります。
経営者にとっては楽になるのでいい事のように思えますが、依頼人目線で考えるとそうではない部分が出てきてしまうのです。
時給制というのはとても分かりやすい給与形態だと思われるのですが、探偵の行う調査に関しては決して良いとは言い難いシステムだと考えます。仕事を請ける元請けの探偵事務所、下請け専門の調査員が時給として仕事をするのが当たり前になってしまい、時間外での仕事を全くやらなくなってしまう弊害があります。
探偵の行う調査というのは〇時から○時までという単純な計算でしてしまうと、ただの単純労働になってしまう危険性があります。
元請けの探偵事務所は依頼を取ることに頭がいっぱいですし、下請けの探偵は時間外の仕事はしなくなります。これは現状として事実です。
探偵の仕事というのは一つ一つ蓋を開けて確認していくという作業の連続ですし、無駄かな、、、と思っても今一度確認しに現場に赴くなどの作業が必要な場合が多々あります。
こうした地道な作業を下請け調査員に頼むと時給が発生するので頼みません。依頼の相談を受け付けた相談員は調査に関しては素人同然なので現場に行って確認するということはほぼありません。
ネット広告でよく見かける探偵社の相談員はコールセンターの受付のようなものだとお考えください。依頼を受けることに専念しており、依頼者の悩みを解決するということは全く考えていない探偵社も存在します。
時給外の仕事はしなくていい
昨今の仕事のあり方、働き方改革を鑑みれば当たり前のことです。しかしながら、尾行を行う浮気調査においてもネットで検索すればより早く、詳しく判明して依頼者にご報告できることもあります。つまり、報告書の内容に厚みが出るのです。
下請け調査員はそういった事はやりません。張り込みして尾行した結果を元請けに報告するだけで、実際に依頼者と会うこともありませんし、依頼人が本来何を知りたかったのかということまでは考えてもないです。
現状の探偵システムが業界をダメにする
自社で優秀な調査員を雇うというのは現状ではとても難しい選択肢です。会社として存在するのであれば、今のシステムが一番なのかもしれません。
でも、本当にそれでよいのでしょうか?
探偵社と依頼者とのトラブルはお互いの認識の乖離が発端となり、料金や結果内容についてトラブルになります。また、思ったよりも薄っぺらい調査報告に愕然とする事もあるでしょう。
そういった経験をした依頼者は二度と探偵事務所に依頼することはないでしょうし、人にも薦めませんよね。未だに酷い調査報告の探偵社も見聞きします。
依頼人にはもっと賢く探偵を選んでほしいのです。広告内容の殆どが嘘です。最新の調査機材を揃えているというのも出鱈目で、下請け調査員の9割が小型のホームビデオしか持っていませんし、明るい望遠レンズをつけたデジタル一眼を持った調査員はこれまで数名しか見たことありません。それくらい生活が厳しいのです。
探偵事務所の悪評というのは殆ど公にならいのには訳があります。探偵に依頼したという事を他人には公言しない依頼人が100ペーセント近いんです。ですからネットの上位表示している探偵事務所に依頼が集中しますし、上位表示させるために必死になっています。
本来あるべき”実力のある探偵”というのはもう存在しないのかもしれません。
平成2年から都内の探偵事務所で従事。平成19年に東京調査サービスとして開業。平成26年に他社と併合の為届出廃止。現在再開に向けて調査員として従事しながら準備を進めている。愛用のカメラはNIKON